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ビル広告枠 現役・要注意

ビル広告枠投資の仕組み・期間・キャッシュフロー・PLへの効果。1口1,000万円を広告宣伝費で全額損金にする

ビル壁面などの広告枠を一括購入して広告宣伝費として全額損金にし、枠の転売収入を月5%で受け取る商材。減価償却資産ではないので経営強化税制とは無関係で、手元に資産が残らない。転売の相手が誰かで全てが決まる。

査定サマリー
総合判定D
税務
高
実態が投資なら広告宣伝費の損金性が問われる
商品
弱
資産が残らず、転売先が不透明
業者
要確認
転売保証なし、6か月以上収益化に要すと自ら記載
出口
不透明
未使用枠は破棄と記載
結論。自社の広告を出す目的で枠を買う法人以外には勧めない。広告を出さない法人が広告枠を買って転売収入を得る取引は、広告宣伝費ではなく投資であり、損金性そのものが税務調査の論点になる。

ビル広告枠は、この連載の中で唯一「減価償却」を使わない商材である。買うのは機械でも車両でもなく、広告を出す「枠」で、それを広告宣伝費として全額損金にする。手元に資産は残らない。この一点で、他の商材と評価の軸が変わる。

仕組み

法人が、ビルの壁面や大型ビジョンの広告枠を、1口1,000万円で一括購入する。業者は「広告宣伝費として全額損金」と書く。買った枠は、法人が自社の広告を出すのではなく、業者が他の広告主に転売し、その収入が法人に月5%ずつ分配される。20か月で元本が戻り、2年で120%というのが業者の表記である。設置と修理は無料、転売の保証は無く、収益化に6か月以上かかることがあり、未使用の枠は破棄される、と業者自身が書いている。

税務の論点はここにある。広告宣伝費が損金になるのは、自社の事業のために広告を出すからである。広告を出す予定がなく、転売収入を得る目的で枠を買う取引は、実態としては投資であり、前払費用か、金融商品への出資に近い。税務調査で「広告宣伝の実態」を問われたとき、自社の広告が一度も出ていなければ、損金性そのものが否認されうる。

期間

2年。月5%の分配が20か月で元本に達し、残り4か月で20%の上乗せになる設計である。広告枠の契約期間が2年で終わり、その後は何も残らない。

キャッシュフロー

1口1,000万円、月50万円(年600万円)の分配を2年、合計1,200万円(120%)の例。購入時に全額を広告宣伝費として損金処理。実効税率33%。単位は万円。

年 投資・売却 分配・収入 損金(−)/益金(+) 税効果 税引後CF 累計
0年目 ▲1,000 0 ▲1,000 +330 ▲670 ▲670
1年目 0 +600 +600 ▲198 +402 ▲268
2年目 0 +600 +600 ▲198 +402 +134
合計 ▲1,000 +1,200 +200 ▲66 +134

「月5%」「2年で120%」は販売業者の表記。分配が転売の実績に連動するのか固定なのかは記載が無い。損金は購入時に全額計上した前提だが、期間対応で2年に按分すべきという見方もある。

税引前200万円、税引後134万円。年率で見れば税引後6%を超え、この連載の中では最も高い。しかし合計の税効果▲66万円は他の商材と同じ「利益の33%」であり、初年度の330万円は2年で全部戻る。

高い利回りの裏にあるのは、資産が残らないことと、転売の相手が見えないことである。月5%の分配は、業者が他の広告主に枠を売れた場合の話で、売れなければ「未使用枠は破棄」される。

PLへの効果

購入時に広告宣伝費1,000万円が販管費に立つ。本業の利益が1,000万円以下なら赤字決算。1年目と2年目は雑収入600万円ずつ。2年の損益合計は200万円で、繰延べは1年。

ただし会計上、2年間の広告枠を一括で費用にするのは期間対応の原則に反する。監査を受けない中小法人でも、税務上は前払費用として2年に按分すべきという指摘を受ける可能性があり、その場合は初年度の損金は500万円になる。業者の「全額損金」は、税務上の扱いを保証したものではない。

査定

税務は、損金性そのものが論点になる唯一の商材である。減価償却商材は「償却の時期」が論点だが、これは「損金になるかどうか」が論点になる。広告を出さない法人が広告宣伝費を計上する矛盾は、税務調査で最初に指摘される。

商品は、資産が残らない点で最も弱い。機械なら業者が倒れても機械は残る。広告枠は業者が倒れれば何も残らない。「転売保証なし」「未使用枠は破棄」と業者が書いている以上、分配は業者の転売能力に全面的に依存する。

組成側の視点

広告枠の商材は、組成する側から見ると「前受金を損金に見せる」設計である。業者は広告枠を法人に売って1,000万円を受け取り、それを原資に広告主を探す。転売できれば分配し、できなければ枠を破棄する。法人が払った1,000万円は、業者の運転資金になっている。月5%という数字は、この運転資金の調達コストであり、それを業者が「利回り」と呼んでいる。

買ってよい法人、買ってはいけない法人

自社の商品やサービスの広告をその枠に出す法人なら、広告宣伝費は本物であり、転売収入は副次的なものとして成立する。広告を出す予定がない法人にとって、この商材は広告宣伝費の名を借りた無担保の運転資金貸付であり、損金性の否認と業者の信用リスクを同時に負う。

出典
  1. 国税庁 法人税基本通達 第2章第2節(販売費及び一般管理費等)
  2. 節税DD 業者の審査(HPに書かれていない10項目)
関連する語: ビル広告枠 投資/広告枠 節税 全額損金/広告宣伝費 節税 商材/デジタルサイネージ 広告枠 投資/広告枠 転売 月5%/広告枠 一括購入 節税
本記事は制度と商品の仕組みを一般的に解説するもので、特定の商品の購入を勧誘するものではありません。即時償却は課税の繰延べであり、税額が必ず減るものではありません。個別の税務判断は税理士にご相談ください。