GPUサーバーは、今売られている即時償却商材の中で最も高額で、最も「120%」の数字が独り歩きしている。この記事は業者サイトの表記を例にして、2,750万円のサーバーが3年型と5年型でどう動くかをキャッシュフローとPLに落とす。数字は業者の表記であり、実績を保証するものではない。
仕組み
法人がGPUサーバーを現物で買う。業者の表記では1台770万円から2,750万円で、上位機は8,000万円を超える。買った法人はサーバーを自社に置かず、データセンター事業者に運用を委託する。事業者は演算能力をAI開発会社などに貸し、その収入から報酬を引いた分を法人に毎月分配する。契約期間が終わると、サーバーを売却するか、事業者が引き取る。
税務上は、中小企業経営強化税制のA類型(工業会証明書)で経営力向上計画の認定を受け、取得価額の全額を初年度に償却する。認定は原則として取得前に必要で、申請から認定まで1.5〜3か月かかる。「決算3か月前までに申し込めば間に合う」が売り文句になる。
ここで最初の論点が出る。経営強化税制は「自社の事業の用に供する」設備が対象で、「貸付けの用に供する」資産は対象外である。運用委託契約が実質的に賃貸借なら、貸付除外に当たる。さらに令和5年度改正で「主要な事業でなく、管理のおおむね全部を他者に委託する」設備が除外された。コインランドリーとマイニングが名指しされたが、構造はGPUの運営委託と同じである。
期間
3年が主流で、5年型もある。業者6社のサイトを確認した範囲では、次のように分かれる。
- 3年型:「契約期間3年間は固定収益」「37か月の収益合計3,300万円で120%回収」と書く業者が複数ある。内訳は「月3%を36か月(108%)、37か月目に12%」で、この数字構成は複数の業者で一致している。同じ供給元の商品と考えるのが自然である。「3年で108%+売却益12〜50%」と書く業者もあり、こちらは残りの12%を売却益と呼んでいる
- 5年型:「5年間の計算力販売収益で投資額の120%」と書く業者が1社。月次の内訳は無く、月換算では2%相当になる。「終了後は原則当社での引き取りを想定」とあるが、引き取り価格の決め方は書かれていない
どちらの型でも、満了時に誰がいくらでサーバーを買い取るかの価格式を書いた業者は無い。「残価」「出口」「売却益」「引き取り」と呼び方だけが違う。ある業者は自社のLPに「3年後の買取価格は保証されますか→保証ではありません」と書いている。
GPUは技術の更新が速く、3年で演算能力あたりの価値が大きく落ちる。経営強化税制の適用期限は2027年3月31日である。
キャッシュフロー
2,750万円で購入。実効税率33%、即時償却が認められる前提。単位は万円。
3年型:月3%(82.5万円)を36か月、37か月目に12%(330万円)
| 年 | 投資・売却 | 分配・収入 | 損金(−)/益金(+) | 税効果 | 税引後CF | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0年目 | ▲2,750 | 0 | 0 | 0 | ▲2,750 | ▲2,750 |
| 1年目 | 0 | +990 | ▲1,760 | +581 | +1,571 | ▲1,179 |
| 2年目 | 0 | +990 | +990 | ▲327 | +663 | ▲516 |
| 3年目(分配+37か月目の12%) | +330 | +990 | +1,320 | ▲436 | +884 | +369 |
| 合計 | ▲2,420 | +2,970 | +550 | ▲181 | +369 |
5年型:月2%(55万円)を60か月、引き取り価格は未記載のためゼロと置く
| 年 | 投資・売却 | 分配・収入 | 損金(−)/益金(+) | 税効果 | 税引後CF | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0年目 | ▲2,750 | 0 | 0 | 0 | ▲2,750 | ▲2,750 |
| 1年目 | 0 | +660 | ▲2,090 | +690 | +1,350 | ▲1,400 |
| 2年目 | 0 | +660 | +660 | ▲218 | +442 | ▲958 |
| 3年目 | 0 | +660 | +660 | ▲218 | +442 | ▲516 |
| 4年目 | 0 | +660 | +660 | ▲218 | +442 | ▲73.7 |
| 5年目 | 0 | +660 | +660 | ▲218 | +442 | +369 |
| 合計 | ▲2,750 | +3,300 | +550 | ▲182 | +369 |
「月3%×36か月+12%」は複数の販売業者のLPに共通する表記。「5年で120%」は1社の表記で内訳は無く、月2%は節税DDの換算。稼働率・分配率の実績はいずれの業者も開示していない。
3年型でも5年型でも、税引前の上乗せは550万円(20%)、税引後は369万円で同じである。違うのは年率で、3年型は税引後で年4.5%程度、5年型は年2.7%程度。同じ120%でも、5年かけて受け取る方は資金の拘束が長い分、実質の利回りが下がる。
初年度は即時償却2,750万円と分配の差し引きで1,760万円(3年型)または2,090万円(5年型)の損金が立ち、581万円または690万円の税が減る。2年目以降は分配がそのまま益金になり、減った税を戻す。差し引きの税効果は▲181万円で、550万円の利益に33%を掛けた金額に等しい。即時償却は、期間の合計の税額を1円も減らしていない。
PLへの効果
初年度のPLには減価償却費2,750万円が販管費に立ち、雑収入が営業外に立つ。本業の利益が損金の額(3年型なら1,760万円)以下の法人は、この年に赤字決算になる。2年目以降は償却が無いので、分配がそのまま利益に乗る。3年型の3年目は、37か月目の12%が簿価ゼロの資産の売却益または最終分配として加わる。
即時償却か税額控除かの選択もある。A類型は取得価額の10%(資本金3,000万円超は7%)の税額控除を選べる。2,750万円なら275万円の税額控除で、これは繰延べではなく本当の減税である。法人税を毎年払っている会社は、即時償却より税額控除の方が合計の税負担が小さくなることが多い。売り手が即時償却しか言わないのは、初年度の数字が大きいからである。
査定
税務は、この商材の最大の論点である。本業との関連性(AI開発、レンダリング、シミュレーションを自社で行っているか)、貸付除外との関係(運用委託契約の法的性質)、認定書と現物の一致(型番・価額)。令和7年度改正でC類型が廃止され、A類型かB類型(投資利益率7%以上)しか入口が無くなった。
商品は、「固定」と「12%」の原資にある。月3%の固定分配は、演算能力の販売収入が想定を下回ったとき誰が補うのか。37か月目の12%は誰が払うのか。業者の一つは、自社の導入事例で「3年目は月約110万円」と書いており、月3%(82.5万円)の内訳と同じサイト内で食い違っている。
業者は設立の浅い会社が多い。「過去の適用事例で否認なし」と書く業者の設立年を確認する。サーバーがどこにあって誰が数えているのか。マイニングマシンの破産で、「機体にシリアル番号が無く、報酬は稼働と無関係に配られていた」ことが管財人の調査で分かった。同じデータセンターで同じ業者が売っている例がある。
組成側の視点
「月3%×36か月+12%」という数字構成が複数の業者で一致しているなら、それは業者が設計した数字ではなく、供給元が設計した数字である。組成する側から見ると、3年で120%固定は「3年間の分配2,970万円と最後の330万円を誰が払うか」の一点に尽きる。演算能力の販売収入が想定を下回ったとき、固定分配の原資は新しい買い手の代金になる。それが続く限り固定で、止まった瞬間に止まる。固定分配の商材で見るべきは利回りではなく、分配の原資が稼働収入なのか販売代金なのかである。
買ってよい法人、買ってはいけない法人
自社でGPUを使う事業があり、余剰の演算能力を貸す形で運用できる法人には、設備投資として成立する。その場合は税額控除との比較を先にする。決算対策のためだけに買い、運用を全部委託する法人は、経営強化税制の要件、2027年3月の期限、封じられた商材と同じ周期の三つに当たっている。