マイニングマシンは、封じられる速さと、封じられたあとに起きたことの両方で、他の商材と桁が違う。令和5年度改正で管理委託型が中小企業経営強化税制から除外され、その2年後の令和7年度改正で暗号資産マイニング業の設備そのものが全面除外された。そして最大手の販売業者ドローンネットは、2025年12月18日に東京地方裁判所で破産手続が始まった。負債は約1,445億円で、2025年の倒産では最大である。
封じられる前の仕組み
売られ方は二つあった。一つは1台9万9,000円のマイニング用コンピュータを小口で売り、10万円未満の少額減価償却資産として購入年度に全額損金にする型。ドローンで封じられた手法の、機材を変えた再演である。もう一つは、まとまった金額のマイニング設備を経営強化税制で即時償却する型だ。
どちらも、買った法人は機械を自分で動かさない。業者がデータセンターでまとめて管理し、採掘した暗号資産の一部を分配し、数年後にほぼ元の価格で買い取る。帝国データバンクによれば、ドローンネットは装置の管理と利益の還元、その後の買い取りまでを一体で提供していた。1年以内なら99%で買い取るという特約があったという情報もあるが、二次情報である。
何がどう変わったか
令和5年度改正で、「暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く)の用に供する資産で、管理のおおむね全部を他の者に委託するもの」が経営強化税制の対象から外れた。コインランドリーと同時、同じ条文である。適用は2023年4月1日以後の取得等。
ここで業者側は「管理の一部を自分で行う」型の商品を作った。すると令和7年度税制改正の大綱(2024年12月27日閣議決定)は、除外する設備として「暗号資産マイニング業の用に供する設備」を、管理委託の有無を問わずに列挙した。国税庁の改正概要も、A類型・B類型・D類型のすべてからマイニング業用の設備を除外したと書いている。適用開始は2025年4月1日とされるが、この日付は二次情報である。
管理委託型の除外から全面除外まで2年。回避商品が出た翌々年に全面封じが来る、という周期がここで実証された。
なぜ封じられたか
会計検査院の指摘は確認できていない。大綱の「節税スキーム対策」条項として、2段階で封じられた。最初の除外を回避する商品が出たことが、2度目の全面除外の直接の理由だと考えるのが自然である。
もう一つの背景は業者の側にある。2025年6月、東京国税局はドローンネットに対し、2024年2月期に約30億円の所得隠しがあったと指摘し、重加算税を含めて法人税約8億円を追徴した。仕入額の計上時期を利益の大きい期にずらす手口だったと報じられている。節税商材を売る会社が、自社の税務で重加算税を受けた。
改正後に残ったもの
経営強化税制からは全面除外なので、この制度を使ったマイニング設備の即時償却は残っていない。少額減価償却資産の型は2022年の貸付除外で塞がれている。自社で採掘事業を営む会社が通常の減価償却をする道は残るが、それは節税商材ではない。
その後、買った人に何が起きたか
ドローンネットは2017年設立で、売上高は2020年2月期の約22億円から2025年2月期の約977億円へ、5年で40倍以上に伸びた。2025年6月に国税の指摘を受け、11月に支払不能となり、12月に実質経営者が死去、12月17日に自己破産を申請、翌18日に開始決定。関係会社4社も破産した。
破産管財人が2026年8月に公表した調査結果は、買った人にとって最悪の内容だった。データセンターに保管されていた機体の台数は「販売台数をはるかに下回る」。機体にはシリアル番号がなく、どの機体が誰のものか特定できない。報酬は実際の稼働と無関係に、顧客ごとに上限を決めて月次で配分されていた。マシンは2024年12月5日ごろに稼働を停止し、2026年3月31日に全て処分が終わった。
つまり買った法人には、三つの損失が同時に来た。買ったはずの機械が存在しない、または特定できない。分配は稼働の実績ではなかった。そして即時償却や少額資産としての損金が、税務調査で否認されうる状態に置かれた。購入者への追徴は公的資料では確認できていないが、現物が特定できない資産の損金は、否認の論点として最も重い。
債権者集会は第1回が2026年7月8日、第2回が2027年2月24日に予定されている。購入者数、販売台数、配当の見込みは管財人のサイトに掲載されていない。
組成側の視点
「機体にシリアル番号がない」という一文が、この商材のすべてを説明している。組成する側が最初に決めるのは、資産をどう特定し、誰が保管し、誰が数えるかだ。それを決めていない商品は、金融商品として組成されていない。売上が5年で40倍になった会社の商品を「実績がある」と読んだ買い手は多かったはずだが、成長の速さは資産の実在を保証しない。むしろ、販売台数と保管台数の差が広がる速さでもある。
次に封じられる商材を読む物差し
マイニングマシンが示した周期は、「管理委託型の除外→回避商品→2年後に全面除外」である。今、同じ経営強化税制で「管理の一部は自分で」と売られている商材は、この周期の1段目にいる。そして業者の審査で見るべきものも、この件で確定した。資産の特定(シリアル番号)、保管場所の第三者確認、分配が稼働実績に連動しているかの証憑。この三つが出てこない商材は、税制改正を待たずに崩れる。