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一部残存国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(令和2年度改正)

海外中古不動産の損益通算はなぜ封じられたか。令和2年度改正と会計検査院の指摘

米国の木造中古住宅を4年で償却し、給与所得と損益通算する手法は、2016年の会計検査院の指摘から3年後に令和2年度改正で封じられた。個人は2021年分から損益通算不可。法人は今も対象外である。

改正の要点
改正・通達国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(令和2年度改正)
根拠租税特別措置法41条の4の3
適用2021年(令和3年)分以後の所得税。改正前から保有する物件も対象
現在の状態一部残存

海外中古不動産の節税は、封じられた手法の中で唯一、会計検査院の指摘から改正までの道筋が公的資料で追える。2016年11月の平成27年度決算検査報告で指摘され、2019年12月の令和2年度税制改正大綱で封じ込めが決まり、2021年分の所得税から適用された。指摘から適用まで約4年。「会計検査院の指摘から数年で封じられる」というパターンの原型がこれである。

封じられる前の仕組み

高所得の個人が、米国などの木造中古住宅を買う。土地と建物の価格比率が日本と逆で、建物が8割を占める物件が多い。法定耐用年数22年を過ぎた木造住宅は、簡便法で耐用年数を4年(22年×20%)と見積もれるので、建物価格を4年で償却できる。

たとえば1億円の物件で建物が7,000万円なら、年1,750万円の減価償却費が立つ。賃料収入を大きく上回る赤字が不動産所得に生じ、それを給与所得や事業所得と損益通算して所得税を減らす。5年目以降に売却すれば、償却で下がった簿価との差額は譲渡所得として分離課税(長期なら20%程度)で済む。所得税率の高い層ほど、総合課税の減額と分離課税の差が利益になった。

何がどう変わったか

令和2年度改正で租税特別措置法41条の4の3が創設された。国外中古建物について、簡便法(または一定の書類のない見積法)で耐用年数を算定した場合、その減価償却費に相当する部分の損失は「生じなかったものとみなす」。つまり国外中古建物の赤字のうち、償却費由来の部分は他の所得と通算できなくなった。

適用は2021年分以後。改正前から持っていた物件も対象で、経過措置はなかった。2020年分までは従来どおり損益通算できたので、駆け込みで売買が動いた。

なぜ封じられたか

会計検査院の平成27年度決算検査報告は、10の税務署の平成23〜25年分を調べ、国外中古建物の所有者延べ337人(純計204人)の減価償却費が39億8,650万円にのぼり、抽出した153人のうち129人(84.3%)が不動産所得で損失を出していたと報告した。国外中古建物の83.2%で減価償却費が賃貸料収入を上回り、一部は10倍を超えていた。簡便法の「100分の20」という率が昭和26年から一度も見直されていないことも指摘し、財務省に減価償却費のあり方を検討するよう求めた。

指摘の3年後、令和2年度改正大綱に盛り込まれた。改正の理由は「所得税の負担を不当に減少させる」という趣旨の説明で、検査院の数字がそのまま根拠になっている。

改正後に残ったもの

法人は対象外である。法人が国外中古建物を保有する場合、簡便法による短い耐用年数での償却は今も認められ、法人の所得全体と通算される。このため改正後、個人から同族法人への売却や、最初から法人で買う提案が広がった。

個人でも、国外不動産同士の内部通算は認められている。また「なかったものとみなされた」損失に相当する額は、売却時の取得費から差し引かないので、譲渡所得の計算でその分は取り戻せる。損失が消えるのではなく、総合課税から分離課税へ付け替えられたと理解するのが正確だ。

その後、買った人に何が起きたか

改正は損益通算を止めただけで、物件の保有や償却そのものを否認したわけではない。追徴や訴訟は公的資料では確認できていない。ただし2020年分までの節税効果を前提に高値で買った物件は、賃料利回りだけで持ち続けることになり、出口の判断を迫られた。

組成側の視点

海外不動産の節税は「税率の差」を利益にする設計だった。総合課税の最高税率と、譲渡所得の分離課税の差。この構造は、損金の大きさを売る商材とは少し違う。だから封じ方も「損失をなかったことにする」という、他の商材には見られない型になった。会計検査院が数字を出した時点で、封じられるまでの残り時間は読めた。検査報告は毎年11月に公表される。節税商材を買う前に、その年の報告に自分の商材の名前がないかを確認するだけで、3年先の改正が見える。

次に封じられる商材を読む物差し

検査院の指摘は、公表から改正まで3〜4年の猶予があった。これが最も長い部類で、国税庁の通達改正なら公表から適用まで10日、税制改正大綱なら12月の決定から翌4月の適用まで4か月しかない。封じられる経路によって、逃げる時間がまったく違う。検査院が名指しした商材は、まだ時間がある代わりに、封じられることがほぼ確定している。

出典
  1. 会計検査院 平成27年度決算検査報告「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」
  2. 租税特別措置法41条の4の3(税務研究会 法令データベース)
  3. 野村不動産ソリューションズ 国外中古建物の損益通算制限の解説
  4. 辻・本郷税理士法人 海外不動産の減価償却と改正の解説
関連する語: 海外不動産 節税 改正/国外中古建物 損益通算/租税特別措置法41条の4の3/令和2年度税制改正 不動産/アメリカ不動産 減価償却 4年/簡便法 耐用年数/会計検査院 国外中古建物
本記事は制度と商品の仕組みを一般的に解説するもので、特定の商品の購入を勧誘するものではありません。即時償却は課税の繰延べであり、税額が必ず減るものではありません。個別の税務判断は税理士にご相談ください。