節税商材の販売ページには、商品の仕組みと利回りと「即時償却」の文字はあるが、金融商品取引業の登録番号が書いてないものが珍しくない。書いてないのは、たまたま載せ忘れたのか、登録がないのか、登録している別会社が裏にいるのか。この三つは買い手にとって全く違う意味を持つ。登録の有無は、業者審査で最初に、しかも自分の手で確かめられる数少ない項目である。
なぜ節税商材に金商法が関係するのか
オペレーティングリース、GPUサーバーの一部、中古トラック、コインランドリーの一部は、買い手が設備を直接持つのではなく、営業者(販売会社やそのSPC)に出資して、営業者が設備を運用し、損益を分配する形をとる。これが商法上の匿名組合契約で、出資者から見れば「他人の事業に金を出して利益の分配を受ける権利」になる。
金融商品取引法は、この権利を「集団投資スキーム持分」として有価証券とみなす(2条2項5号)。株や社債のような紙は無くても、法律上は有価証券の扱いになる。そして有価証券の募集や私募を、発行者が自分で行うこと(自己募集)は第二種金融商品取引業にあたり、登録を受けなければできない(28条2項1号、29条)。
つまり、匿名組合型の節税商材を「買いませんか」と勧誘した時点で、勧誘した会社には第二種の登録が要る。設備を売っているように見えても、法律上は有価証券を売っている。
ここで例外が二つある。買い手が設備そのものを所有する売買型(トレカ自販機、キャンピングカー、太陽光の現物など)は、匿名組合ではないので金商法の対象にならない。もう一つは次の節で触れる特例業務である。
金融庁の一覧で引く手順
登録の有無は金融庁のサイトで誰でも調べられる。手順は4つ。
- 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」のページを開く
- 「金融商品取引業者」の一覧(PDFまたはExcel)を開く
- 業者名で検索し、「第二種金融商品取引業」の欄に印があるかを見る
- 登録番号(「関東財務局長(金商)第○○号」の形)を控え、販売ページや契約書の記載と突き合わせる
ここで気をつける点が三つある。
販売会社の名前で引いて出てこないことは多い。営業者が別のSPC(合同会社が多い)で、登録業者はさらに別の会社、という三層構造が普通だからである。その場合は契約書の「取扱者」「募集の取扱い」の欄に出てくる会社名で引き直す。販売ページに登録業者の名前も番号も出てこないなら、資料請求の段階で「この出資の勧誘をしている第二種業者はどこか、登録番号は何か」と聞く。答えが返ってこない、あるいは「税理士の先生からの紹介なので登録は不要」と返ってくるなら、その時点で審査は終わりにしてよい。
一覧は更新に時差がある。登録取消や廃業は一覧から消えるまで数週間かかることがあるので、同じページにある「登録取消」「業務停止」の処分情報も合わせて見る。
商号変更にも注意がいる。登録時の商号と販売ページの商号が違うことがあるので、一致しない場合は登録番号で引く。
登録でなく「届出」で済ませる抜け道
一覧に出てこないのに「金融庁に届け出ている」と言う業者がある。これは適格機関投資家等特例業務(金商法63条)のことで、登録ではなく届出で済む制度である。
特例業務は、出資者に適格機関投資家(証券会社、銀行、一定規模の投資家など)が1名以上いて、それ以外の一般の出資者が49名以下であることを条件に、登録なしで集団投資スキームの自己募集と運用を認める。本来はプロ向けファンドのための制度だが、2015年の改正前は一般投資家側の要件がほぼ無く、節税商材や未公開株の販売に広く使われた。改正後は一般投資家側にも投資判断能力の要件が入り、純資産や投資経験の基準を満たさない個人は出資者になれない。法人も、特例業務の相手方になれるのは資本金や純資産の基準を満たす法人に限られる。
届出業者は金融庁の「適格機関投資家等特例業務届出者」の一覧に別に載っている。登録業者の一覧に無いときはこちらも見る。ただし届出業者には登録業者に課される財産的基礎や人的構成の要件がなく、監督もはるかに薄い。節税商材の買い手である中小企業が特例業務の相手方の要件を満たしているかは、買い手自身が確認することになる。
特例業務の届出すら無いなら、それは無登録営業である。
無登録で勧誘されたら何が起きるか
無登録で有価証券の勧誘をすれば、金商法29条違反で、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、法人には5億円以下の罰金が科されうる(197条の2、207条)。金融庁は無登録業者の名称を公表しており、名前が出た業者は銀行口座の凍結や取引先の離反で事業が続かなくなることが多い。
買い手にとって重要なのは、業者が罰せられるかどうかではなく、自分の出資がどうなるかである。無登録業者との匿名組合契約は、直ちに無効になるわけではない。ただし、業者が摘発や破綻で止まったとき、設備の運用も分配も止まる。登録業者には分別管理や説明義務が課され、違反には行政処分の裏付けがあるが、無登録業者にはそれが無い。出資金の行方を追う手がかりが、契約書と業者の良心だけになる。
税務面でも影響が出うる。勧誘の実態が有価証券の販売であることが明らかになれば、「設備の取得」ではなく「金融商品への出資」として扱われ、即時償却や特別償却の前提が崩れる論点になる。ドローン販売の最大手だった業者の事案では、国税が事業実態の欠如を指摘した経緯が報じられている。登録の無さは、それ自体が否認の理由になるのではなく、事業の実態が無いことの傍証として効いてくる。
税理士が紹介料で売る構造
節税商材の多くは、税理士からの紹介で中小企業に届く。顧問先の決算が黒字で、期末まで3か月、何か損金が欲しい。そこに販売会社から「先生、こういう商品があります」と資料が来て、成約すると紹介料が払われる。買い手は税理士が勧めたのだから安全だと受け取る。
この構造には二つの問題がある。
一つは、紹介料で有価証券の販売を媒介する行為は、それ自体が金融商品仲介業または第二種金融商品取引業の登録を要する行為になりうることである。「紹介しただけ」と「媒介した」の線は、顧客の説得にどこまで関わったかで決まる。税理士は税務の専門家であって金融商品の登録業者ではないので、紹介の対価を受け取る形は、税理士自身にとっても危うい。
もう一つは利益相反である。紹介料は成約額に比例するのが普通で、商材の金額が大きいほど税理士の取り分が増える。否認リスクや出口の問題を最も厳しく見るべき立場の人が、売れたときに報酬を受け取る側にいる。顧問税理士が紹介してきた商材ほど、登録と決算と現物の確認を、税理士ではなく自分でやったほうがよい。
税理士に紹介料が支払われているかは、販売会社に直接聞けば分かる。「紹介手数料の有無と料率」を文書で求めて、答えない業者は、他の条件がどれほど良くても見送る根拠になる。
審査の順番
登録の確認は、決算書や現物を見に行く前に済ませる。理由は単純で、登録が無い業者の決算書を読んでも意味が無いからである。
- 契約の型が匿名組合(出資型)か売買(現物型)かを契約書で確認する
- 出資型なら、勧誘している会社の第二種登録を金融庁の一覧で引く
- 一覧に無ければ、特例業務の届出一覧を見る。届出もなければ見送る
- 登録があれば、登録番号を契約書に書かせ、決算と資本の出所の確認に進む
ここまでで1時間はかからない。1,000万円を超える出資を決める前に、この1時間を省く理由はない。